先輩に学ぶ!50代から始める、みんなのための勉強

勉強というと、つい子供が学校で先生に手取り足取り教えて貰う風景を思い描きがち。 でも、実際は大人になっても日々勉強。しかも、それは先生のように質問すればなんでも丁寧に教えてくれる答えのある勉強ばかりではありません。 社会に出れば、正解のない問題ばかり。 目の前の課題に対して、どう突破できる? どうすれば最適?と必死に考えて、仲間で答えを導き出してその日その日を突破しています。 そして、それは私たちのような若い世代だけでなく、私たちよりもずっと上の世代のベテランの人たちにとっても同じ。


日々新しい事への挑戦を続けなければ、これまでの知識はすぐに古い時代の認識に変わり、段々と自分の枠の中に留まってしまいます。 そんなふうに知らず知らずのうちに自分で「これ位でいいや」と枠を作ってしまう思考から脱却して、還暦を間近にして「みんなの役に立ちたい」「この歳からでも世界を掴みたい」と思考の開放へ至った私の大先輩を紹介します。


『統合役を任されてから意識が変わって来た。何かを掴みたい気持ちがとても強くなった』

 設計室意匠房の酒井さんは、還暦も近く設計経験豊富な大ベテラン。 特に建物の外装(雨や風を直接受け止めて人々を守る人間の皮膚に当る部分)の設計に関しては飛び抜けた知識と技術力を持っている人です。 しかし、少し前までは、チームで仕事をすることに対して苦手意識を持っていて、同じチームメンバーとも幾度も衝突し、そんな状況をどう突破すればいいのか自身でも分からずに、思い悩んでいる姿をよく見かけました。 そんな酒井さんが最近、劇的に変わったのです。 会社が大忙しな状況や、統合約となって大プロジェクトを進めてほしいという周りの期待。そして、私たち若手の「学びたい」「一人前になりたい」という気持ちに触発されて、段々と仲間に向かい、自分の想いを赤裸々に語ってくれました。


最短で相手の幹を掴む=「相手に同化」する

>実は、PC(プレキャストコンクリートを用いる工事)物件の監理経験はあるが、設計はしたことがない。幹を理解していないのでいつも不安だった。

>来年に還暦になることを考えると、超短時間で能力を獲得する必要がある。その為には自分が0から調べている時間はないので、一番良く知っている人に聞きながら幹を掴むことにした。これは、最短で相手の幹を掴む=「相手に同化」することになる。

>その時の一番の心の中のひっかかりは、「いい年をしてそんなことも知らないの?」と言われて恥ずかしい思いをすることだった。 


外装のプロフェッショナルの酒井さんにも分からない事があることも驚きでしたが、それ以上に、「いい年してこんなことも知らないの?」の一言がこれまで酒井さんの心に蓋をしていたという事実に驚きました。 確かに、年齢を重ねるごとに自分の技術力に対する周りの期待が大きくなりすぎて、身動きが取れなくなってしまうのかもしれません。 しかし、それはあくまでも「自分」という個人の枠に囚われた発想。 酒井さん自身がそれに気づき、皆に発信してくれました。


 >しかし、今の東京事務所の風通しの良さ=各人の心の解放の流れを見るにつけ、知らないことを誤魔化して勝手に自分だけ苦行に浸り、不確かな技術のままでいることは組織的にまずいと思った。


「会社の中で真に役に立ちたい」

>最近、設計講習会に参加して、「会社の中で真に役に立ちたい」と思い初めている。 講習会の凄さは幹、枝、葉を鮮明にしていること。いい加減な知識(=経験脳)ではだめだと気付かされた。


ここで私自身とても大きな気づきを得たのが「知らないことを誤魔化して自分だけ苦行に浸る」という部分。そして「真に役に立ちたい」という気持ち。 大ベテランになっても酒井さんはまだまだ自分に足りない世界を掴みたい、と活力を漲らせていますが、それは全て小さな「自分」という枠ではなく「みんな」「仲間」という対象を根本に置いています。


>組織と房及び同世代の仲間の共認域が繋がったことが硬い殻(保身)を打ち砕いてくれた。本当にこれまでの自分を謝罪し、組織に感謝します。


自分の得る知識・技術が仲間を勝たせて、皆の役に立つ。 だからこそ年齢関係なく、誰にでも聞くし、講習会でも貪欲に認識を得ようとする。 これこそが、高い次元での勉強なのだと思います。 そして、酒井さんは更に、思考の解放から生まれた志を語ってくれています。


「仲間のために世界を掴む」

>最新の風に触れ、過去の普遍的な納まりを改めて知り、それらをミックスしながら更に高い技術に統合し、新しい環境技術の波を加えて本源技術を確立したい。 >ならば、「本源建築を目指す類のトップを目指せば良い」


酒井さん自身、既に相当な知識と技術力を持っていますが、仲間を勝たせ、皆を助けるために更に高みを目指しています。 「自分の枠に閉じこもって答えありきの知識に留まる」から「仲間のために世界を掴む」に転換することで、人はここまで活力を持って追求に向かうことができるのですね。 皆さんの周りにもこんな素敵なベテランの方はいらっしゃいますか。 もしかしたら、あなたやあなたの周りの人々も、ちょっとしたキッカケで劇的に変わるかもしれませんね。

                              (東京設計室 意匠房 渡澤翼)

0コメント

  • 1000 / 1000