【第9回】鉄骨とコンクリートで日本建築の様式美を再現~西本願寺西山別院 第一研修道場~

45周年エピソード第9回目は、「西本願寺西山別院 第一研修道場」をご紹介します。
本案件の設計担当である、大阪設計室の喜田ディレクターに話を聞きました。
 

日本建築の様式美再現への想い

この建物は、西本願寺西山別院に建つ浄土真宗本願寺派僧侶育成の登竜門となる研修道場です。

慈照寺の東求堂や鹿苑寺の金閣などに見られるように、古来日本人は、別院建築や書院建築において質の高い様式建築を造ってきました。本建築も歴史に裏打ちされた日本建築の伝統美を再現したい。という想いで設計しました。

 

デザインのよりどころとなった「日本の美意識」

歴史上の思想や政治の変遷に合わせ伝来した様々な仏教に、その時々で実現された建築様式を重ね合わせて追求する中で、日本の美意識とは「自然との同化」より生まれている、との確信に至りました。西本願寺建築の本質もそこにあります。
ものごとの本質を際立たせる「簡素さ、清純さ、素材美」、自然に生かされているという想いを反映した「謙虚さ、繊細さ、優しさ」、自然との調和を図るための「水平ライン、陰影」など、日本建築の美しい要素を浮かび上がらせ、これらの要素を統合してゆきました。
 
特に、”自然との調和”については力を注いで追求しました。

実現するためには、吸い込まれるような“深い軒裏の陰影”と”水平に広がる屋根の反り”が一番重要な追求ポイントでした。これにより、建築と庭園をつなぎ、天地の間に立って人間のつくる空間と自然がつくる空間の調和を図ることで、建築の存在を自然の中に溶け込ませたのです。


現代の建築素材で日本建築の様式美を再現する

通常の様式建築は2階建てですが、プロポーザルの設計与件は3階建ての研修道場でした。
そこで、3階建てで繊細かつ軽快な日本建築の美しさを再現するため、木ではなく現代の素材である鉄骨とコンクリート(GRC素材)を使用することにしました。


柱は4枚の鉄板を溶接で張り合わせ、梁は継ぎ手を見せないようカバープレートを溶接して仕上げることで、木の柱や梁のような繊細さと軽快さを実現。
法的に不燃性能が求められる深い軒にはGRC素材を用いて垂木や軒の照りを表現することで、現代の素材で日本建築の様式美を再現しました。
 

実施設計でのミリ単位の追求

本建築は、3階建てで日本建築の美しいプロポーションを表現出来るかどうかが最大の追求ポイントであり、そのための屋根をかける位置と深い軒の出、伸びやかな屋根の反りが生命線。実施設計では数多くの様式建築を調査しスケッチを重ねる中で、軒の出や屋根の反り方の法則性、アールの比率を追求し、小口の処理をはじめとした軒先のフォルムには細心のディテールを施しました。
 日本建築の様式の中に在る、“洗練された「用」と「美」を最小のコストで実現する”ことを設計の目標に掲げていました。
設計チームの皆で、門徒や地域住民をはじめ社会に永く愛される建築を実現するんだ!と、邁進した当時が懐かしい。と喜田。
 当時の先輩たちの、熱のこもった手描きスケッチや立面詳細図より見て取れる追求の軌跡からは、実現への強い意思を感じます。

自然と同化しながら、静かな存在感を放つ本建築の背後には、先輩設計者たちの「日本建築の様式美の再現」への熱い想いがありました。

(設計広報担当/共同保育室 中川翔子)

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